壱、シュウマイ奉行、誕生の刻(とき)
かつて、京の都に「シュウマイ奉行」と呼ばれる男が居り申した。
その者、名を明かさず、ただただ「味」に己が魂を捧げし職人なり。
そもそも奉行の祖たる者は、江戸の世にて名高き初代京都所司代・板倉勝重公。
厳格公正を以て天下を治めし偉人の血を継ぐ者として、
「食」にもまた、厳しき道を貫く覚悟を持ちておった。
弐、一子相伝、味の道
若き日、就職氷河期にて職を得られず、妻は毎日、冷や飯ならぬコンビニの弁当を口に運ぶ日々。
「このままではいかん…」と、奉行は心を痛め、ついに刀ならぬ包丁を握り、調理師学校へと足を踏み入れた。
その折、電車の中でふと目にした焼売と餃子の広告に心を打たれ、
「これぞ我が歩むべき道」と、胸に火が灯り申した。
「わしが焼売で、世をあたためてみせようぞ。」
かくして、点心道を極める日々が始まったのでございます。
参、京都という舞台
なぜ、京にて点心を売るかと申せば、それは己がルーツに他ならず。
奉行の祖は、まさにこの京の地にて所司代を務め、民のために尽くされたお方。
その血を受けし者として、「京の誇りと伝統を、この点心に託す」と決意したのでございます。
京の素材、京の心、京の粋。
それらを込めて、奉行は一つひとつの点心を丁寧に仕上げて参る。
肆、奉行の六品目の御点心
一、海老ネギ饅頭
「ぷりぷりの海老に、九条葱の香り…まさに贅沢なる一口よ。」
焼けば香ばしく、蒸せばふわりと。京の技と中華の魂がここに宿る。
二、たまご春巻
「サクッと噛めば、とろりと卵…口の中に春が咲くようじゃ。」
冷凍庫に常備しておけば、いつでも京の宴が開け申す。
三、えび水餃子
「もちもちの皮に、海老の弾力…湯に浮かべれば、極上の一品となる。」
スープにも鍋にも、よくぞ合う。これはまさに、冬の夜の友。
四、昔ながらの焼売
「素朴ゆえに、深し…これぞ町中華の原点にして、わしの初心じゃ。」
味に飾りは要らぬ、真っすぐな心でこしらえる焼売なり。
五、だし焼売
「京のだしは、味の要(かなめ)。豚肉と出汁が出会えば、もはや芸術。」
卵かけご飯に添えれば、まことに至福の刻を味わえよう。
六、海老焼売
「海老の存在感、堂々たるもの。主役を張るにふさわしい点心じゃ。」
贅を尽くした一口に、誰もが瞠目するであろう。
伍、未来へ──点心の志
「京都市を、餃子の消費量日本一にせんとす──」
シュウマイ奉行、いまや一国一城の主となり、
その想いを包み込んだ点心を、全国津々浦々へと届け申す。
京の台所に笑顔を。
ひとくちの温もりが、誰かの明日を照らすように。
奉行は、今日も黙々と蒸籠の前に立ち、
その蒸気の向こうに、未来を見つめておるのです──。